全国学力調査なんていらない

先に記しておきますが、以下は定年退職をして3年目に入っている私の考えです。

全国学力・学習状況調査について記事を見るようになった

このところ、ネットのニュースなどで全国学力・学習状況調査(以下、学力調査)についての記事を見るようになりました。
4/18に実施されたからです。(この記事を書いているのは、4/19)
退職した身としては、また無駄なお金と労力が費やされるという気分になります。

学力調査は、コスパが悪い

何事にも、良い面と悪い面があります。私は、学力調査の実施については、反対です。
理由は、圧倒的にコスパが悪いからです。
文科省によると、目的は次のようになっています。

  • 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。
  • 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。
  • そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。

要は、子供の力を調べて、その結果により指導の改善に生かすってことなのでしょう。
しかしながら、4月に実施して結果が出るのは、年度末より少し前くらいです。この時差はとてもとても大きいといえます。

例えば、R23年度の小学校6年生の学力調査について考えてみましょう。

4月調査実施……子供の実力は、R22年度の5年生への指導によってつけられたもの。
結果発表までの間……R23年度の6年生へ指導
年度末結果公開……R23年度の指導はほぼ終わって復習の段階。

つまり6年の終わりになってから、その前年度の5年生の学習についての結果が発表されるってことです。
年度末になって、その学年の(6年生)の指導の復習をしている時点に、前年度の5年生の指導の結果としての状況がわかっても、ほとんど意味をなしません。6年生の担任にしてみれば、自分が指導していない前年度の結果についてとやかく言われても、どうしろっていうの? という感じです。

さらにいえば、個人情報を大切にするわけですから、この学力調査の結果を中学校に送るなんてことはしません。おそらく中学校でも、4月の忙しい時期に、小学校の学力調査の結果なんて検討している余裕はないでしょう。

つまりは、学力調査の結果が年度末に出たところで、それを調査→結果の分析→課題の克服のサイクルに乗せるなんてことは、ほとんど行われないのです。

一方、全国で一斉に行われるわけですから、それにかかる費用は膨大になっているはずです。
また、上記の理由で、結果がすぐに出ないので、学校内で職員が必死になって校内採点をするということも行われています。地域によっては、教育委員会がそれをやるように指導しているところもあるようです。
自分が教員をしていた時にも、4月の忙しい時期に、全職員で採点を分担して実施したものでした。
4月は、めっちゃ忙しい時期ですから(7時出勤、20時退勤なんて珍しくない時期です。)、それだけの労力をかけるってのは、本当に大きな負担となっていました。
働き方改革の正反対って感じです。

つまりは、学力調査のメリットは小さく、そして、デメリットはめっちゃ大きいってことなのです。

過去問を解かせるのはやめるべきか?

学力調査の結果について、地域を比較するべきじゃないというような意見が散見されます。けれど、実際には、どこの県の平均点が高く、どこの県がビリだったみたいなことがちゃーんと話題になります。ある県の知事は、同県の成績の悪さに腹を立てて、教育現場にプレッシャーをかけたものでした。
まあ結果の地域による違いを比べるなという建前はわかりますが、実際に比べたくなる気持ちは、わからないではありません。

で、いっとき話題になったのは、平均点の良かった県で過去問を徹底的に解かせる練習をしていたということです。
私は、それはそれで当然のことなのだからいいだろうと思いました。練習して、力がついて、それなりに良い結果が出せたならそれはそれでいいでしょう。

私は、教員当時、過去問による練習をするべきだと主張してきました。結果を比べられるからということではありません。
せっかく実施するならば、少しは子供の力をつけることに役立てればいいと考えたからです。

全国で行われるわけですから、問題はそれなりに精選されています。つまりその学年の学習の勘所となるところを押さえ、その定着がわかるような問題が設定されているわけです。
そういった調査の過去問を解くということは、効率的に学習できるということになります。
実際、大学入試のための学習において、過去問を解くというのは、基本中の基本になっています。
だから、過去問を2、3年分とかせれば、その対象となる学習内容の勘所について復習できることになるのです。
4月に前年度の復習ができるってのは、悪いことじゃありません。

ところが、「過去問を解かせるな」とかいう意見が結構みられます。
簡単にいってしまえば、その子供の実力を見るんだから、過去問を解くというようなズルをしないで、調査すべきだっていうようなことです。
練習することが悪い! っていう扱いです。

学力調査が、子供の力を伸ばすことを目的とするならば、過去問を使って練習したっていいんじゃないか? って私は考えます。

例えばの話ですが、短距離ランナーがいるとします。大会が近づいてきます。普通なら、大会のレギュレーションに合わせ、大会と同様の練習をすることでしょう。大会と同じような形式で練習して課題が見えたら、それを克服するような努力だってするでしょう。大会に近い形で練習することがその選手の力を伸ばし、良い結果を出すことにつながるはずです。

学力調査で過去問を解かせるなというのは、大会直前になって、それまでの練習の成果を出せばいいのだから、大会に近い形で練習などするべきじゃない。大会で課題が見えたら、そこで課題克服をすればいいのだ……というようなものでしょう。

結局のところ、かっこいいことをいって、無駄な金と労力を使い、たいした成果を得られないのが学力調査ってことになるんじゃないか? って思います。

現場の教師の声を聞いているのか?

学力調査では、子どもに生活に関わるようなアンケートもとっています。学習状況調査ってことです。
ならば、現場の教師にも学力調査についてのアンケートをとるべきではないでしょうか? 端的にいって学力調査は必要か? 私が現職の時に、そういった調査は行われていませんでした。おそらく今でもそうでしょう。もし、実際に現場の声を取ったら、学力調査などいらないと答える教員は少なくないと想像されます。
メリットが全くないとは言いません。が、デメリットが多すぎなのです。

文科省は、そういう調査はしません。生活科が導入された時も、総合的な学習の時間が導入されたときも、外国が入ってきた時もです。
もし、文科省が学力調査に価値があるのだと考えるのならば、実際に現場の教師の声を聞いてみればいい。そして、それを元に「ほら、価値があるでしょう?」って胸を張って主張すればいいのです。

……学力調査で大きなお金が動く、やめるとなれば、それがなくなる。結局のところ利権が関わるから、やめることはないのでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました