小中学校の道徳の授業で「人間の業の肯定」ってのを扱うべきじゃないかな

落語は人間の業の肯定

「落語は人間の業の肯定」という言葉は立川談志が言ったらしい。落語ではだいたいおかしいやつやずるいやつ、変なやつばかり登場する。浮気する旦那や女将さん、飲み過ぎる若旦那、……そういった人物がいきいきと描かれ活躍? する。
人間は不完全な存在。それを認めるのが落語というわけだ。
正論通りに生きている人間なんてそういるものじゃない。たたけばいくらでもホコリが出る。自分だってそうだ。だからといって自分を全面的に否定することはできない。

ネット上の不寛容さにはうんざり

ネット上では正論をかざして大きな犯罪やちょっとしたミスをとりあげて必要以上に人を貶めようとする者が多い。
たしかに言っていることはただしいのかもしれないが、だからといってそんなにいじわるに批判しなくてもいいんじゃないの? って思わずにはいられない。
正直うんざりしている。

また、逆に正しく生きなければならない、ずるしちゃいけないって考えて自らに厳しくなり自分を傷つけたり無理しすぎたりする人もいる。頑張りすぎて過労死する若者、自殺する若者の報道を見ると心が痛くなる。
自分を甘やかすのはよくないのかもしれないが、自分に寛容になるってことも必要に思える。

小中学校の道徳の授業でも「人間の業の肯定」ってのを扱うべきじゃないだろうか?

正論から考えれば、やっちゃいけないことをやっちゃいけないし、やらなきゃいけないことをやらないのはだめなのだ。それは、間違いない。
でも、理屈通りに生きていけないのが人間でもある。
愚かな行いを笑って許してやる寛容さも必要なのだと思う。

自分は小学校の教員をやっていたから道徳の授業も実施してきた。
道徳の授業では徳目とかいうカテゴリーみたいなやつがあって、文科省のお役人様は、それらをすべて扱うように現場の教員に押し付けてくる。でも、社会の出来事ってのは、そんな徳目に分類されるような単純なものじゃない。そして、徳目は、みな正論通りに生きることを押し付けているように感じてきた。
だから、自分はあまり徳目優先のみの道徳なんてやってこなかった。長くなってしまうのでここでは書かないが、自分の道徳の授業ではいつも子どもが討論し、結論が出ないまま終わるなんてことが大半だった。

子どもは、さぼったり、ずるしたり、いじわるしたりすることがある。いやいや大人の方がひどいのかもしれない。
それは、いいことじゃない。
でも「そういうこともたまにはあるよなぁ」って許してもいいこともたくさんあるはず。重い犯罪行為じゃなければ、ゆるされるようなこともたくさんあるはずなのだ。
ならば笑って許してやるという寛容さも子どもたちに教えた方がいいのではないか? って思う。
ネットに見られる不寛容さを考えると「人間の業の肯定」がわからない者が多すぎると思う。正論をかざして人を貶める人間に「あなたはそんなにりっぱな人間なの?」ってたずねてやりたくなる。

「いいじゃんカード」を否定した仲間はひとりもいなかった。

現職の時代、仕事仲間に次のような話を冗談交じりにした。

一人に年間2枚の「いいじゃんカード」ってのを配ることにする。
で、なんかの失敗をして他者から叱責を受けるようなことがあったとき「いいじゃんカード使います」っていってカードを見せる。見せられた者はそれ以上相手を攻撃してはいけないってことにする。
「いいじゃんカード」は「たしかに悪いことだけどついやってしまったんでですよ。いいじゃん、ゆるして」という意味のカードだ。
で、人のためにとてもいいことをしたら「いいじゃんカード」を1枚もらえるようにする。よいことをした人間は、許してもらえる機会もふえるようにするわけだ。
人間は、悪いことやずるいこと、やりすぎになることをしてしまう。それを許すようなシステムだってあっていいと思うんだけどなぁ。

「いいじゃんカード」の話は10回以上いろいろな人にした。勿論冗談なのだけど、それを否定する人はひとりもいなかった。
「いいですね。それ。政治家になって実現してくださいよ。」
という者さえいた。

今読んでいる本に「池上彰の行動経済学入門」がある。

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それによると「人は道理に合わない思いや行動を取る」ということだ。10000円得する喜びよりも10000円損するショックの方を大きく感じるのだという。理屈通りなら同じはずなのに……。

「人間の業の肯定」ってこと、みんながもう少し真剣に考えたほうがいいんじゃないかなぁと思うし、子どもたちに教える必要があるんじゃないか? って元小学校の教員の自分は思う。

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