「ろう下を走るな!」というより「修行が足りぬ!」と言った方が楽しい

子どもはろう下をよく走る。

勤務校では、子どもがろう下をよく走ります。比較的新しい校舎なので、ろう下が広く、さらに、教室前にはろう下のかわって教室とほぼ同じサイズの広いワークスペースという空間が設けられています。このため、他の学校よりも、子どもが走りやすくなっているのです。

子どもは、本来多動なものですから、走りたくなる気持ちはわかります。しかし、それをそのまま見過ごすと、互いにぶつかり合って怪我をしてしまいます。事実、小さな衝突はあちこちで見られました。

ろう下を走らないような指導が必要!

怪我を防ぐためには、やはり子どもが走らないように指導をしなければなりません。普段、子どもがろう下で走っていると、

「走ると危ない。人を怪我させる」

と声かけしますが、大半の子は、そのまま走り去ってしまいます。よほどスピードを上げて走っている子には、体を受け止めてその危険さを諭すということもします。が、焼け石に水状態です。

ポスターを作ることにする。

そこで、担任している3年生のフロアーにポスターを作って貼ることにしました。なんとか、走るのを減らそうとしないわけにはいられなかったからです。(3年生は特に元気の良い学年です。)

しかしながら、「ろう下を静かに歩きましょう」などと書いて、走らなくなるほど世の中は甘くありません。そのポスターの前を走り抜けていくのが子どもというものです。どうしたものかと考えました。

子どもは、「鬼滅の刃」が大好きだ!

そこで、思い出したのが、「鬼滅の刃」ブームです。子どもたちの多くが「鬼滅の刃」を好きになっています。休み時間に「鬼滅の刃」ごっこをしたり、「鬼滅の刃」のキャラクターのTシャツを着たりしています。また、おしゃべりの中に「全集中」といった言葉を入れたりもしています。

この「全集中」が使えると思いました。そこでポスターには、鬼滅の刃のキャラクターを描き「ろう下は、全集中でしずかに歩こう」とうフレーズをつけました。また次のような旨の説明も入れました。

ろう下を走ると人にけがをさせることがある。そのことを知っていながら走るのは正義ではない!
走るのは修行が足りないということだ!

また、キャラクターに吹き出しをつけて次のようなセリフも入れました。

ついろう下を走ってしまうっていうのは、自分の心にまけてしまっているということだよ。

このポスターを掲示したところ、子どもたちが群がってきました。「鬼滅の刃」効果は絶大です。朝の会でも、ポスタを見せて、ろう下を静かに歩くことは、人を思いやることにもつながるのだという旨の話をしました。

「ろう下を走るな!」ではなく「修行が足りぬ!」

この指導とポスターの効果もあってか、実際、学年内の走る子どもの数は、減りました。しかし、それでもつい走ってしまう子がいるのも事実です。それまでならば、
「ろう下を走っちゃいけない!」
と声かけをするところですが、
「ろう下を走っている! 修行が足りないぞ!」
と言ってみました。すると、普段ならば、そのまま走り抜けてしまうような子が、「やばっ!」というようなはずかしそうな笑顔を見せて、歩くようになりました。

「修行が足りない」という言葉の中に、自らの未熟さ指摘されたという匂いを感じ取るのでしょう。修行が足りないと「鬼滅の刃」の主人公には近づけません。だから、普段なら教師の言葉が聞こえないふりをして走り抜けてしまう子も、歩き出すのだと考えられます。

私達教員としても、「修行が足りない」と言った方が、楽しく思えます。子ども同士でも、走っている子を見つけたら「修行が足りないよ」と言えれば楽しく安全な歩行を呼びかけられるようになります。
子どもへの指導言、やはり、子どもの心に落ちるように工夫をすることが大事だと感じました。

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